最近話題になっている「走行距離課税」について、一体誰が最初に言い出したのか気になっている人も多いのではないでしょうか。
実は、この制度について最初に提案したのは意外な人物でした。今回は、走行距離課税の提案者から現在の状況まで、詳しく調べてみました。
最初に言い出したのは石油業界のトップ!
引用元:日本経済新聞
走行距離課税を最初に提案したのは、実は石油連盟会長の天坊昭彦氏でした。
2009年10月、当時出光興産会長も務めていた天坊氏が、経済産業省の公開ヒアリングで
「道路を使うすべての車が走行距離に応じて税を払うと税金としては正しいんじゃないか」
と述べ、走行税の導入を要望したのが始まりです。
個人的な意見・考察:
石油業界のトップが走行距離課税を提案したのは、一見矛盾しているように思えますが、実は非常に戦略的な提案だったと考えられます。当時からハイブリッド車やエコカーの普及でガソリンの消費量が減少傾向にあり、石油業界としても将来を見据えた税制改革の必要性を感じていたのでしょう。
政府税制調査会で具体的検討を提案したのは土居委員
2022年10月26日の政府税制調査会第20回総会で、土居委員が走行距離課税について
「例えば、走行距離に応じて課税するなど、かなり踏み込んで具体的な走行課税について議論することを私は提案したいと思います」と発言しました。
この発言が、現在の走行距離課税議論の直接的なきっかけとなっています。
個人的な意見・考察:
土居委員の提案は、脱炭素化が進む中での税収減少という現実的な問題に対する合理的な解決策として提示されました。しかし、この提案が実際に議論されることで、多くの国民が初めて走行距離課税の可能性を知ることになり、大きな反響を呼ぶことになったのです。
国会で話題になったのは鈴木財務相の答弁
引用元:nikkei asia
2022年10月20日の参議院予算委員会で、国民民主党の浜口誠議員がEVの税制について質問した際、鈴木俊一財務相が走行距離課税について「一つの考え方だと思っている」と答弁しました。
この発言により、走行距離課税が政府レベルで検討されていることが明らかになりました。
個人的な意見・考察:
政府の最高責任者の一人である財務大臣がこのような発言をしたことで、走行距離課税は単なる検討段階ではなく、実際に導入される可能性のある政策として受け止められました。この答弁が、後の大きな議論の火種になったと言えるでしょう。
なぜ今、走行距離課税が議論されるのか?
走行距離課税が注目される背景には、以下のような要因があります:
1. 燃料税収の大幅減少
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2023年度の燃料課税収入は約3.1兆円で、2021年度から約1兆円(24%)も減少
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ハイブリッド車や電気自動車の普及により、ガソリン税収がさらに減少する見込み
2. 電動車の急速な普及
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2023年の電動車販売台数は前年比26.6%増の200万台を突破
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電動車比率は50.3%で初めて5割を超えた
3. 道路整備・維持費の増加
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道路インフラの老朽化により維持管理費が増大
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新設よりも維持・更新により多くの費用が必要
個人的な意見・考察:
この流れは必然的だったと思います。環境に良い車を推進する一方で、その結果として税収が減少するという矛盾した状況が生まれていました。政府としては、どこかでこの問題に対処する必要があったのです。
自動車業界からは猛反発
日本自動車工業会(豊田章男会長)の永塚誠一副会長は2022年11月、走行距離課税について「国民的議論もないままに導入することには断固、反対する」と強く批判しました。
反対理由:
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地方在住者や物流事業者の税負担が大幅に増加
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電動車の普及にブレーキがかかる可能性
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移動のたびに課税される制度は国民の理解を得られない
個人的な意見・考察:
自動車業界の反発は当然でしょう。せっかく環境に配慮した車を作っても、結局は走行距離で課税されるのでは、消費者にとって電動車を選ぶメリットが薄れてしまいます。
また、自動車産業は日本の基幹産業でもあるため、この業界への影響は国全体の経済にも関わる重要な問題です。
地方からも強い反対の声
走行距離課税に対しては、特に地方の住民から「ふざけるな!」「都市部との格差が広がる」といった厳しい反対意見が寄せられています。
地方住民が反対する理由:
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公共交通機関が限られているため車の使用頻度が高い
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通勤・通学での長距離移動が日常的
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生活必需品としての車に対する課税への不満
個人的な意見・考察:
地方の反発は非常に理解できます。都市部では電車やバスが発達しているので車を使わなくても生活できますが、地方では車がなければ生活そのものが成り立ちません。同じ距離を移動するにしても、選択肢の有無が全く異なるのです。
プライバシー保護の課題も
走行距離課税を実施するためには、正確な走行距離の測定が必要ですが、GPS技術を使用する場合、個人の移動履歴が記録されることになります。
技術的課題:
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オドメーター(走行距離計)による自己申告は改ざんのリスクがある
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GPS使用時のプライバシー保護対策が必要
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データ管理・セキュリティ体制の構築が不可欠
個人的な意見・考察:
プライバシーの問題は現代社会では避けて通れない重要な課題です。便利になる一方で、常に監視されているような感覚を持つ人も多いでしょう。政府がどこまで個人の行動を把握できるのか、その境界線を明確にする必要があります。
海外では既に導入されている国も
実は、走行距離課税は日本独自のアイデアではありません。ドイツ、スイス、オーストラリア、アメリカの一部の州では既に導入されています。
海外の事例:
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ニュージーランド:平均的に1kmあたり約5円の課税
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欧州各国:プラットフォーム事業者による納税代行システムも導入
個人的な意見・考察:
海外の事例があることで、走行距離課税は決して非現実的な制度ではないことが分かります。しかし、各国の交通事情や社会構造は異なるため、日本に適した制度設計が重要になります。
現在の状況と今後の見通し
2024年12月に与党が発表した「令和7年度税制改正大綱」では、「車体課税や燃料課税を含め、中長期的視点から公平・中立かつ簡素な課税方式を総合的に見直す」と記されています。
現状:
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具体的な導入時期は未定
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2025年度以降の実施を目指した検討が継続中
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国民的議論の必要性が指摘されている
個人的な意見・考察:
政府としては慎重に進めている印象を受けます。強い反対意見があることを承知の上で、どのように国民の理解を得るかが重要な課題となっています。拙速な導入は避け、十分な議論を重ねる必要があるでしょう。
まとめ:複雑な利害関係が絡む難しい問題
走行距離課税の提案者を辿ると、2009年の石油連盟会長・天坊昭彦氏から始まり、2022年の政府税制調査会・土居委員の具体的提案、そして鈴木財務相の政府見解表明という流れが見えてきました。
しかし、この制度をめぐっては以下のような複雑な問題が存在します:
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税収確保 vs 国民負担増
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環境政策 vs 経済負担
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都市部 vs 地方の格差
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技術的利便性 vs プライバシー保護
最終的な個人的意見・感想:
走行距離課税は、表面的には単純な課税制度のように見えますが、実際には日本社会の様々な課題が凝縮された複雑な問題だと感じます。提案者それぞれに合理的な理由があり、反対する人々にも切実な事情があります。
重要なのは、誰が言い出したかよりも、この制度が本当に公平で持続可能な社会を作るのに役立つかどうかです。十分な国民的議論を通じて、全ての人が納得できる解決策を見つけることが求められています。
今後も、この問題の動向から目が離せませんね。皆さんはどのように考えますか?